「反対意見が出ない=同意した、賛成している」とは限りません。沈黙も一つの自己表現であり、その裏側には、言いたいけれど言えない、または伝えることでその後にやってくる状況を恐れて何も言わない選択をされることもあります。沈黙をすることで同意していない、賛成していないという自己表現する人と、沈黙を同意した、反対者はいないと受け取る人との間には、当然ながらコミュニケーションエラーがその後も続きます。それは職場内に限らず、家族や学校でも起きることです。
この記事では、沈黙の抵抗が起きやすい環境・タイプを例に、沈黙の抵抗のサインの見つけ方などをまとめています。沈黙の抵抗をしている方に気づき、いかに早期に対応するかでコミュニケーションエラーは改善されやすくなります。
なぜ起こる?沈黙の抵抗
沈黙という行為も、表現のサインの一つであり、何も言わないから「YES」だとは限りません。NOと言えない環境・関係性が生み出していることかもしれません。
- 発言したときに、すぐに否定やダメ出しをしていないか
- 完璧主義や完全を求めて、少しのズレも認めない状況になっていないか
このような状態が続くと「言いたいけれど言えない」状況になり、発言しない沈黙をすることが結果として自分自身を守ることにつながります。
Google社が2012~2015年までの4年間に行った生産性向上のためのプロジェクトをおこない、「心理的安全性」という言葉が注目されるようになりました。
「誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地がある」とは、相手を許容できる範囲があると言えます。
沈黙の抵抗が起きやすい理由として、完璧・完全主義な人や、自分のやり方を貫こうとするために、相手や周りを許容できる範囲が狭い方に生じやすいのかもしれません。
許容できる範囲の拡げ方
自分自身のこだわり、信念を持つことは素晴らしい魅力の一つです。一つのブレない軸を持つことは、あなたの行動指針となり、一貫性した言動につながります。その言動をしてきた方だからこそ、自分の中のルールを守りたい意志は強いのではないでしょうか?
ただ、もしかしたら完璧・完全を目指すために、少しのズレも気になりやすくなっているかもしれません。そのズレは本当に許容できない範囲でしょうか?
一度ご自身の許容範囲について整理してみましょう。
① 許容できる範囲
② 少し違うけれど許容できる範囲
③ 許容できない範囲
①は、ご自身と同じ価値観や思考を持っている範囲であるため、許容できる範囲と言えます。自分と同じ感覚、物事の捉え方やスピード感も似ているため、居心地の良い範囲でしょう。
②は、決して妥協ではありません。少しのズレを認めることができる、少しの違いを楽しめる範囲です。
③は、どうしても許容できない範囲であり、個を否定されることや、社会などのルール・規律に反することなどを指します。
たとえば、会議をするとき。
あなたは5分前に会議室に向かうことが当然と考えているとき、同じ5分前くらいに集まってくるメンバーとは同じ意識を持っているため、①の方々と言えます。次に、遅刻をすることはないけれど、いつも開始時間直前にバタバタしながら入室するメンバーは、時間の余裕を持っていない違いはあるけれど、時間に対する意識はしっかり持っているため、②の方と言えるかもしれません。
そして、会議にいつも遅れて参加をするメンバー、また遅刻することが当たり前で誤りもしないメンバーに対しては、ビジネスにおけるルール・規律が守られていない、③の方と言えます。ただ、いつも時間を守るメンバーが、当日遅刻をして必死に謝る場面に遭遇したときは、突発的な諸事情があったのかもしれないと、②の範囲にあたることもあります。
完璧・完全主義の方は、②の領域が低く、③の領域が広い方になります。そうすると気持ちの余裕がなく、常に相手の「負」「不」を探すことをしやすくなります。その目線から相手の良いこと、許容できることを増やしていく視点を持っていくことで、②の領域は拡がっていきます。
沈黙の抵抗サインの見つけ方
最近、周りで以下のことを感じたことはありませんか?
- 元々口数は少ない人だけど、最近さらに対話をしなくなった
- いつも提出期限を守っている人が、最近守らなくなった
- 自分の殻に閉じこもるようになった
- 指示したことはこなすけれど、それ以上のことをやろうとしない
- 報連相が疎かになってきた
上記の内容を見ると、上司や教育担当者など沈黙の抵抗をされている側は、単純に仕事を怠けていると思いやすいですよね。実際に提出期限を守らないことは、他に迷惑をかける行為になるため、注意をすることは当然です。ただ、今までできていたことができなくなったことには「理由」があります。その理由を「聴く」ことをすることも必要ですね。
注意や叱責だけになると、沈黙の抵抗は進んでいきます。コミュニケーションエラーの深みは増していくだけです。
いつもやってきたことが、やらなくなった、できなくなった
これは大きなサインの一つですので、上司や教育担当者だけではなく、周りの方も気づいたら声かけをしていくと、大きなコミュニケーショントラブルになる前に改善していくことができます。
サインに気づく、安心・安全に話す時間を持つ
コミニケションエラーは、ボタンの掛け違いのようなものです。最初の掛け違いにいかに早く気づくかが重要です。沈黙の抵抗は、「言いたいことがあるけれど言えないサイン」であり、そのサインに「気づいて欲しい」という想いもあります。気づいた方は、ぜひ一度心理的安全性の場となる、「自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地を持つ」時間として話しを聴く機会をつくってみてください。
そうすることで、沈黙の抵抗が和らいでいき「いつもやってきたことが、やらなくなった、できなくなった」状態から元に戻りやすくなりますよ。
あなたの周りで、沈黙の抵抗をされている方はいますでしょうか?
もしあなた自身が現在、沈黙の抵抗をしている側であれば、一度現在の状況を安心・安全に話せる相手に相談してみると良いですよ。その相手は社内の同僚や他部署のメンバーかもしれません。もしくは家族や友達でも良いです。
身近に話せる相手が見つからなければ外部の専門家であるキャリアコンサルタントに相談してみませんか?現在の気持ちを整えながら、沈黙の抵抗の苦しさや緊張感を和らげていきます。そして今後の動き方や方向性など一緒に考えて見つけていくことができますよ。