離職するときに本音は語りません。なぜならスムーズに退職したいと考えているからです。私も会社員時代に退職の旨を伝えるときは、冷静に淡々と話していました。それまでの想いや感情はありましたが、きれいさっぱり辞めたい意志が強く、感情論で話しをしてもこじれるだけだと思っていたからです。
ではいつから離職を考えるようになり、そのきっかけはどのようなことだったのかと言うと、もうずっと長く違和感やモヤモヤを抱え込み、常にギリギリの状態で仕事をしていた状態で、あるときギリギリ状態の糸が切れた、そんな感じだったと思います。
キャリアコンサルタントの仕事をするようになってから、離職を決意するまでの葛藤期間にキャリア相談をすることもあり、従業員の本音を聴く機会も多くあります。その中で従業員の離職理由の本音と建て前を考えながら、離職を決意するまでの葛藤期間について、どのように上司は対応すべきなのかをまとめています。
本音を語ることがない離職理由
従業員が本音ではなく建て前で離職を告げる理由は、
- 円満に退職したいから
- 言っても理解してもらえないと思うから
- 会社批判になってしまうから
- 退職遺留や引き留められそうだから
- 感情論になってしまい建設的な話しにならないから
離職を決断するまでに、様々な出来事や葛藤の期間があります。こじれた糸をほどこうと努力したり、たくさん問題を抱えていることを一つずつ見つめ直しています。そして従業員自身の中で気持ちの整理がつき、結果として離職を選んだ、ということです。
整理できたことをまたこじらせてしまうことは嫌だから、本音ではなく建て前になり、できるだけ当たり障りなく退職したい、という意志のあらわれなのでしょうね。
離職理由の本音とは
将来独立や自営を引き継ぐために経験値を高めたい!というような明確なキャリアビジョンを抱えている方はごく一部です。大抵の場合、離職をしようと思って入社してきません。長く勤めたい、自分の能力を活かしたい、自己成長ができる会社だと期待値を膨らませて入社してきます。
幾度となく失敗を繰り返しながらも、達成したとき、褒められることで自信がつきます。また、仕事の醍醐味を感じると同時に仕事のプレッシャーも大きく受けるようになります。仕事のプレッシャーを、意欲を活気づける良いスパイスとして楽しむことで、より自己成長につながります。
でもふとした瞬間、プレッシャーが重くのしかかる時期がやってきます。この時期は入社して半年の方もいれば10年経ってから感じる方など、個々によって異なります。それまで活気づいていたエンジンが減速するとき、減速したときの状況・理由を探すだけではなく、過去を掘り起こして、
「そういえばあの時から違和感を感じていた」
「昔から○○な考えがイヤだった」
と、以前なら思わなかった不満を、あれこれ見つけるようになります。これが離職理由の本音につながります。
葛藤の期間は継続するための努力
離職までの葛藤の期間は、従業員自身も解決の模索をしています。この期間に気づき、ケアすることで離職を防ぎ、従業員自身も奮起して頑張ろうと思うようになります。上司は従業員の葛藤の期間を、達成への壁を乗り越える期間と勘違いしがちです。会社に対す不信感がでている葛藤の姿と、仕事のプレッシャーを抱えている姿は、周囲から見ると、似たような見た目に見えるからです。
似た見た目を見分けることができるようになるためには、日常繰り返す従業員との接し方、向き合い方、職場環境にあります。一つの物事においても、昔は快く引き受けていたが最近は、声のトーンが低くなったり、返答に間が合ったり、何となく気だるさが見える瞬間を、どれだけ察知することができるかで葛藤に気づくようになります。
なぜ人の感情は変化するのか
過去気にならなかったことが、思い返すと違和感や嫌悪感を抱く原因は、信頼関係がなくなったことに尽きます。過去違和感や嫌悪感は感じていたことは事実かもしれません。でもその気持ち以上に
「仕事を達成する意欲」
「褒められたい欲求」
の方が強かったため、見えていなかったことなのです。きっとその頃は、その意欲や欲求に応える上司や環境が揃っていたため、相乗効果につながり、さらに前向きに仕事に取り組めるようになっていたからです。
経験が増えると、それだけ様々なことに慣れていきます。達成することが当たり前な環境の場合、達成してもとくに褒めるということをしなくなるかもしれません。また褒められても、当たり前すぎてとりあえず言っているだけに聞こえてしまい、褒め言葉に疑心暗鬼を抱くこともあります。
冒頭の離職理由の一つに「言っても理解してもらえないと思うから」は、信頼関係が無くなっている証拠です。理解してもらえないと感じた期間は在職中のできごとです。
だからこそ、従業員の日ごろのケアは必要です。良い信頼関係を長く続けていくことは、職場環境と声かけのバランスを保つことが大事なのです。このバランスを保つためには、過去に記事でまとめています。
- 上司が見逃しがちな部下が離職に至るまでの危険サインとは
- 仕事のプレッシャーを面白いほど楽しくさせるための人材育成術①「ストレスを味方につける」
- 仕事のプレッシャーを面白いほど楽しくさせるための人材育成術②「職場をつくる」
ぜひ参考にして、職場で活用してみてくださいね。
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