入社時は人一倍手がかかったスタッフも経験を積むにつれてみるみるうちに成長し、気がつけば自分の右腕の存在になるくらい頼りにできるようになった。以前のように一から説明しなくても、阿吽の呼吸で理解してくれるから仕事のスピードも早いし、要領も良い。
でもいつしか、何となく傲慢さや意見の食い違いが出てきていることに気づいた。仕事はきちんとこなしているので、これも成長過程の一つと見るか否か・・・。そんな従業員との信頼関係や考えの変化において、それぞれの感じ方のギャップについて事例を交えて考えていきます。
今回は経営者・上司目線編です。(従業員の目線編はコチラ)
堂々巡りからの脱皮
今までは採用してもすぐに辞めてしまったり、やっと成長して使えるようになってきたと感じた頃に辞表を出しに来たりする社員たちに正直うんざりしていた。人材を雇用することの難しさと、教育することの大変さを、起業してからの数年は痛切に感じていた。
人材が定着しないことで、いつも業務が滞ってしまい、もう何年も同じ場所を堂々巡りしてしまっている気がしてならなかった。その状況から脱したいために、人材採用・教育に時間とお金をかける覚悟で3人採用した。ずっと赤字が続いている企業にとって最後の賭けでもあった。
今までは、正直きちんと教えてやれなかったと思う。本人の過去の経験を理由に、「自分なりに考えてやるように」と自主性重んじていると言えば聞こえはいいが、正直ほったらかしだったと感じていた。だから今回の採用については、手塩に掛けて丁寧に教え、日々コミュニケーションを取りながら、疑問に感じていることがあれば即解決できるような身近な距離感をとりながら、人材を育てる時間を費やした。
結果として、1年間誰も辞めずに成長してくれた。その成長は予想をはるか超えた成長度であり、それが企業利益にも確実に繋がっていった。それまでの赤字経営から黒字転換が見えてきたときは、やはり経営は人ありきだと再認識した。
黒字転換が見え始めたころから、今まで堂々巡りでなかなか進むことができなかった次のステージの段階に進んでいけると確信した。今の業務はこのスタッフで安心して任せられる、会社としての基盤ができたと、一つの達成感を感じながら、次へのステージに向けて興奮していた。
頼りにしている安心感からうまれる歪み
阿吽の呼吸のように、一つのことを言えば先々のことを考えながら動いてくれるようになったので、仕事に何ら支障はない。すでに一人はクライアントごと任せている状態なので、今はそのスタッフの方がクライアントについての知識は豊富であろう。そうなってくれたことが頼もしいし、右腕の存在になりつつあるので、将来は経営にも携わる存在になってほしいと願っていた。
ところが、最近傲慢さや意見の食い違いが出てくることが多くなった気がしている。私自身、次のステージに進むことで日々忙しく、社内にいることが少なくなり、何となくコミュニケーション不足は感じていた。でも業務日報はメールで届くので、各スタッフの様子などはきちんと把握できているので問題はないと思っていた。
そんなある日、スタッフと面と向かって話しができる時間が久しぶりに取ることができた。そこで、少し違和感を感じていたスタッフと面談をしてみると、やはり今までと雰囲気が違うことに気づいた。見た目とか疲れているなどではない。話しを聴いているようには見えるけれど、明らかに上辺で聴いているように見えてならない。今まで熱心に聴いていた目とは明らかに違っていた。
思い描いていた次のステージの話しをしても、イマイチ乗り気ではなく、冷めた受け答えに感じてしまうその態度に苛立つと、反発して声を荒げてきた。このときは、何故こんなに反発するのかが疑問でしかなかった。
新しい目線を増やして気づけたこと
明らかに変化を感じたスタッフの態度が気になり、キャリアコンサルティングを依頼してみることにした。第3者が加わることで見えなかったことがわかるかもしれない、そう感じて。
すると、あることに気づいた。それは次のステージへ進む準備をしている私と、日々の業務を任され毎日こなすことで精一杯であるスタッフには大きな隔たりがある、ということに。私は未来へ向かって考えているのに対して、スタッフは現状のことで必死で、先々を考えている余裕がない。
会社の基盤となっている業務をこなしてくれているからこそ、次のステージに進めていく余裕ができていたと思っていたが、いつしかその基盤となるスタッフが、心を置いてきぼりにされている、と感じているのではないだろうか。
現状に必死のスタッフ、先を考える私。未来を描くと誰でもワクワクする。楽しくてたまらない。でも現状に必死のスタッフには、それを考えている余裕もなく、ましてや未来を考えている私を見て、羨ましく妬ましいのかもしれない。
ただ、これは明らかにスタッフの思い込みによる勘違いだ。今でも頼もしい人材だし信頼している。それはこれからも変わらない。会社になくてはならない十分に価値のあるスタッフだから、手離す気など全くない。ただ、勘違いさせてしまった原因は、やはりコミュニケーション不足だろう。
頼りにしているからこそ、任せっきりにしたことで、いつしかスタッフは会社での存在価値を見失う
企業の軸として活動していたスタッフという「幹」は、任せっきりという放ったらかしにすることでいつしか枯れ腐っていってしまう。水をやり、肥料をすることで、より大きく葉を拡げ、たまにくる強風にもびくともしない大きな木へと成長する、それが企業の在り方なのだと
水やりというコミュニケーションや、肥料というキャリアコンサルティングで、元気を取り戻していく。
人材は会社の軸であり幹だということに気づかされた日。
これからは水やりを一気にするのではなく、バランスよくやっていこうと思う。加えて、たまに肥料という栄養素も・・・。
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